連載全2回のうち第2回目
作成:讃匠 麺研究センター
前回は、AIを活用した「利益の再定義」「調理時間による隠れた原価の可視化」「時間帯・曜日・客層別の売れ筋分析」について解説しました。
今回は、さらに踏み込んだ「戦略的価格設計」と「季節変動を織り込んだメニュー最適化」、そして具体的な「実践ステップ」をご紹介します。
AIの分析によって、人気商品の価格弾力性(=値上げしてもお客様が離れにくい度合い)が分かります。
人気メニューは50円値上げしても注文数がほとんど変わらないことが多く 、場合によっては値上げによって「特別感」が生まれ、満足度がむしろ上がることもあります。
ただし、価格弾力性分析には過去の価格変更履歴と販売数のデータが必要です。
まだ履歴がない場合でも、AIは以下のような推定分析を行うことが可能です 。
・現在の価格と売上構成比(出数)
・メニューの原価率・粗利率・調理時間
・類似店舗・類似商品での販売実績との相関
・SNSやレビューでの「支持率」や満足度スコア
これにより、AIは「この商品は価格を10〜30円上げても支持される可能性が高い」などの仮説を立てることができます。
これらの傾向は、AIが気温と売上データをクロス分析することで即時に分かります 。同じうどんでも、「構成」や「見せ方」「名前」ひとつで売れ行きが変わります 。
例えば:
・「氷水仕立てレモンざる」:7月~8月に売上が通常ざるの1.6倍
・「温玉おろしぶっかけ」:25℃前後の平日にサラリーマン層に人気
・「小盛りぶっかけ+麦茶サービス」:猛暑日での回転率+25%
“気温ごとのベストメニュー”を自動で表示・提案することが、AIの真骨頂です。これらを元に、季節別に構成・表示・価格を調整すれば、客単価と満足度を同時に高めることができます。
実際にAIを導入した店舗では、以下のような変化がありました。
・郊外型うどん店:夏場は“氷ざるうどん”を券売機トップに表示した結果、客単価+90円、提供時間−25%を実現しました。
・駅前型立ち食いラーメン店:人気メニューをAI分析で+30円値上げした結果、粗利+年間45万円、お客様の離脱はゼロでした。
商業施設内の店舗:冬季に“温出汁+ご飯小盛”セットを自動提案することで、滞在時間+20%、再来店率が向上しました。
①メニューごとの原価と調理時間をExcel等で棚卸し②POSデータを曜日・時間帯・季節で分析➂AIツールを使って価格・人気・利益の相関を見える化④メニュー表示(券売機・タブレット)を客層・時間帯別に最適化⑤SNS・LINE連携で“気温に合ったオススメ”をパーソナライズ配信
AIは、職人の勘に取って代わるものではなく、それを裏付け、進化させる“第二の目利き”です 。
・味は変えずに、利益を上げる
・値上げしても、お客様が満足してくれる
・季節に応じて、食べたくなるメニューが自然に提供できる仕組み作り
こうした経営感覚が、今日から“数字”と“ロジック”で身につく時代です。麺ビジネスも「丼勘定」ではなく、デジタル化が必須の時代になりました。デジタル化を推進し、事業を繁栄させ、長く生き残れるビジネスを目指していきましょう。
麺に関するご相談は、いつでも承っておりますので、お気軽にご連絡ください。
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