うどんの画像

連載全1回のうち第1回目

作成:讃匠 麺研究センター

「茹でる」と「煮る」はまったく違う

目次

麺の美味しさを保つために、店側に求められるのは——“茹での再現性です。

① “美味しさの差”は、麺ではなく「釜」で生まれる

麺の品質が安定していて、まったくブレないことは、お店にとって大きな強みとなります。 だからこそ、お店ごとの差はどこで生まれるのか? 答えはただ一つです。 茹での再現性=釜管理の正確さです。 うどんは、本来「高温の大量の湯で一気に茹でる料理」です。 しかし、多くの店が無意識のうちに “煮る” という別の料理をしてしまっています。 ここが、美味しさの分岐点です。
② 「茹でる」と「煮る」の違い
「茹で」には大切な役割があります。 うどんの麺線には、製造段階でしっかり塩が練り込まれています。 この塩を “茹でる工程で湯に移す” ことで、讃岐うどん特有の
  • 透明感
  • 粘り
  • 弾力(コシ)
  • のど越し
が生まれます。 しかし湯量が少ないと、釜の塩の濃度がすぐに高くなるため、 麺の塩分が抜け切らないのです。 するとどうなるか?
  • 麺が白いまま
  • 表面がざらつく
  • 粘りが弱くなる
  • コシが出ない
  • 中心が“しょっぱく”感じる
これがまさに “煮る状態” です。 つまり、湯量不足は決して味のブレではなく、 原理原則レベルのミスなのです。
③ 「1:10の湯量ルール」は“うどんの真理”

讃岐うどんには絶対条件があります。

麺の重量:湯量 = 1:10(最低ライン)

讃匠の製麺機は、ただの機械ではありません。創業者(77歳)の製麺理論を0.1mm単位で再現。

  • 1kg → 10L
  • 2kg → 20L
  • 5kg → 50L

この比率を守らない限り、 うどんは「茹でる」ではなく「煮る」になります。

湯量が10倍あることで初めて、

  • 湯温が落ちない
  • 対流が起こる
  • 塩がしっかり抜ける
  • 麺が泳ぐ
  • 透明感が出る

という “讃岐うどんの美味しさの型” が成立します。

腕の差ではありません。 湯量の差がすべてです。

④ 「差し水」は絶対にしてはいけない

――現代の正解は「差し湯」です。

昔は薪釜で火力調整が難しく、吹きこぼれを防ぐために “差し水”をしていました。

しかし今は時代が違います。

火力で自由に調整できる現代では、 差し水は逆効果です。

  • 湯温が一気に5〜10℃低下
  • 麺が伸びる
  • 塩抜きが止まる
  • 麺が泳ぐ
  • 弾力が消える
だからこそ現代の讃岐うどんは “差し湯” が正解です。

◎ 熱湯を足して湯量を維持し、温度を落とさない

これが最も美味しく茹でるための現代式・正しい釜管理です。

⑤ “濁り”を放置すると、麺が死ぬ

――排水×足し湯で釜を「生きた状態」に保つ

営業が続くと、麺のデンプンが溶け出し、釜が濁ってきます。

濁りは麺の大敵です。 放置するとーー

  • 茹で時間が長くなる
  • 麺線から透明感が消える
  • 粘りが弱くなる
  • ベタつきが出る

専用釜を使う場合は、

  • ドレン(排水口)から汚れた湯を抜く
  • 抜いた分だけ“熱湯”を足す

これを営業中も繰り返すことで、 釜を“常に生きた状態”に保てます。

讃岐の職人が言ってきた 「釜の濁り=麺の死」 とは、まさにこのことです。

釜管理の科学こそが、繁盛店をつくる

次の3つのポイントを守ることで、麺本来の旨みと食感を最大限に発揮できるようになります。

  • 麺の10倍の湯量は確保する
  • 差し水はしない(差し湯で温度維持)
  • 濁りは排水×足し湯で消す

これを守るだけで、 誰が茹でても“讃岐うどんの正解” を再現できます。

味の安定は、信用です。 信用の積み重ねが、繁盛です。

うどんは生き物です。 だからこそ、茹で方の“原理”を知る店だけが勝ち残る時代です。

“釜管理の科学”で あなたのお店の未来を支え続けます。