作成:讃匠 麺研究センター
「値上げをするとお客様が離れる」と思っていませんか?
しかし実際には、“価格の高さ”ではなく、“理由の薄さ”が客離れを招きます。
今回は、「お客様にもっと喜んでいただき、価格も上げられる店」になるための考え方をお伝えします。
私がよく引き合いに出すのは、丸亀市にある骨付鶏の一鶴です。
さぬきうどんの本場で、骨付き鶏もも肉一本で70年余り、 普通のうどん店が足元にも及ばない売上を誇ります。
しかも丸亀本店は席数300席。 それでも平日の夜に行列ができるのです。
価格は決して安くありません。 それでも多くのお客様が足繁く通う理由は明快です。 この店は、「お客様の問題解決」をしているのです。
いつの時代でも、人はストレスを抱えています。
この店に行き、熱々の骨付鶏を豪快にかぶりつき、 ビールをガンガン飲めば、誰もが一発でストレスを発散できるのです。
鶏の足は“手段”にすぎません。
ビジネスの本質は、心の問題解決にあります。
一鶴にはもう一つ、現代的な強みがあります。
それは、たんぱく質をしっかり摂取できることです。
成人が1日に必要なたんぱく質はおよそ70g。
一鶴の骨付鶏もも肉は約250gあり、そのうち3割=約75gがたんぱく質です。
つまり、一本食べるだけで一日のたんぱく質の必要量を満たすのです。
今、日本中で「たんぱく質不足」が指摘されています。
その点でも一鶴は、お客様の“身体の問題”を見事に解決しています。
うどん店の最大の弱点は、でんぷんが主で、たんぱく質が少ないことです。
次の時代のうどん店は、心と身体の両方を満たす設計が求められます。
“心の満足”と“身体の満足”の両輪が、繁盛方程式の本質です。
うどん店における最大の感動体験は、やはり“麺の食感”です。
刺身のような透明感、噛んだ時に押し返すような粘り。
この一瞬の快感こそが、お客様の感情を満たします。
だからこそ、茹で立て10分の価値が生きてきます。
スピードよりも、「この10分でしか出せない感動」を伝えること。
それが、うどんビジネスの本質です。
弾力・粘り・透明感の三拍子が揃うと、 一度食べたお客様が「またあの麺を食べたい」と思うようになります。
味ではなく、“記憶に残る食感”という心の満足なのです。
香川県のうどん店は、この「10分待ち」を逆手に取っています。
お客様を退屈させるのではなく、待ち時間で売上をつくる仕組みを整えているのです。
これらをセルフサービスで自由に取れるようにすることで、 お客様は待ちながら“もう一つの楽しみ”を得られます。
「うどんを待つ10分」が、「おでんと会話を楽しむ10分」に変わる。
結果として、客単価も上がり、待ち時間の不満も消えます。
これが、香川うどん文化が生み出した繁盛方程式のひとつです。
一鶴にとっての骨付鶏、 うどん店にとっての“茹で立ての食感”。
どちらも「心と身体の満足」を設計しているのです。
お客様がまた来たくなる理由は、安さではなく“感動の再現”にあります。