連載全4回のうち第2回目
作成:讃匠 麺研究センター
2. うどんの歴史を再度ひも解いてみると:③江戸時代:つゆ文化の確立と啜り文化の続きからです。
明治時代になると、製麺機が導入され、 均一な太さや長さの麺を大量生産できるようになりました。
これにより、麺の食感や柔らかさが安定し、 誰でも食べやすい品質が提供されるようになり、 さらに出前文化が広まると、うどんを自宅で手軽に食べる機会が増え、 家庭のうどん文化も発展したのです。
さぬきうどんは、もともと手打ち技術が創り出す独特な食文化でしたが、 製麺機が発明された後も、手打ちと変わらない麺を創り出す製麺機のニーズがあり、 それに応える様に、われわれ製麺機メーカーが切磋琢磨して、 手打ちに負けない美味しい麺が出来る製麺機の開発に取り組んだのです。
うどんの包丁切りと製麺機による麺線カットには、作業工程、仕上がりの麺の質感や食感、 そして製法上の特徴に違いがあります。
麺打ち職人が、伸ばした生地を包丁を使い、手作業で切る伝統的な方法です。
特別なうどん包丁を使い、生地を一定の太さや幅に均等に切り分けますが、
これには練習と技術が必要になります。
また、うどん生地は手早くカットし、茹でに入る必要がありますが、
経験者でも1.5kgのうどん生地をカットするのに平均1分30秒ほどかかります。
職人の包丁技術によって断面がシャープに仕上がり、
茹でた後にも麺の四辺が凹み、麺線がまっすぐでなく、ねじれた麺になる場合があります。
微妙な太さの違いが出ることで、よく言えば麺に「手作り感」があり、
茹でたときにムラのある食感(もちもちとした部分や少し硬めの部分)が生まれるので、
「職人の手仕事による麺の個性」として伝統や職人技の価値を伝えるとともに、
名物うどんと評価される場合もあります。
但し、こういった個性や伝統は正確に受け継ぐのが大変難しく、
店の伝統の味や後継者問題につながる場合もあるので、
メリットとデメリットをよくよく理解しておく必要があります。
製麺機における麺線カットには、手作業と同じ包丁切りカット方式と、
ロール式の片薄刃の切刃による、押し切り方式があります。
当然、切刃による押し切り方式より、包丁切り方式の方が、カット断面がシャープに仕上がります。
包丁切り方式は、麺線を1本1本カットするのと比べて、生産性が劣るので、
生産性を第一に考えるチェーン店の一部では、切り刃方式を採用している店舗もあります。
グループ会社の大和製作所の製麺機「真打」は基本的に、包丁切り方式ですが、包丁カッター部分を外して、
切刃による押切方式のカッター機と組み合わせて、使っている事例もあります。
真打の包丁カッターで麺をカットする場合、まずロールで生地を一定の厚さに伸ばし、
刃先角3度のシャープなカッターで均一な太さに切り分けます。
自動化されているため、大量生産が可能で、麺の形状がほぼ完全に均一になります。
麺の断面も直角切りなので切り刃のカットに比べると切り口がシャープで、
茹でた後もしっかりとエッジの立った麺ができ、非常に出汁のノリが良くなるのが特徴です。
太さが均一なため、茹で上がりも均一で、一連の流れをマニュアル化しやすい為、
誰にでもすぐに安定した品質のうどんを作る事ができます。
さらに製麺機の場合、1.5kgのうどん生地を約20秒でカットできます。
お店のピーク時に製麺に追われることもなく、すぐにカットできるので切り置きも不要、
もしくは切り置きをするとしても最低限の量を短時間置くだけで店を回す事ができるので、
お客様に最高に美味しい状態の麺を提供する事ができるようになります。
切幅と厚さの比率がうどんの完成度と美味しさを決定する重要な要素です。
また、同じ太さであれば、茹で時間が短いほど、美味しいうどんになっています。
うどんの麺の切幅と厚さ比率は、食感、茹で上がりの均一性、
出汁・つゆとの絡み方、喉ごしなど、すべてに影響を与える極めて重要な要素です。
製麺時にこの比率を守ることで、うどん特有の魅力を最大限引き出すことができます。
一般的に、地域によっても麺の切幅と厚さには個性があり、
さらに同じ地域でも店舗、メニューによっても異なる要素ではありますが、
さぬきうどんのようにしっかりとした粘り強さともちもち感を出しながら、
茹であがった麺のエッジが立ち、出汁やつゆとの絡みが良くなる黄金比率は、
大和製作所では厚さ1に対して切幅が1.4と推奨しています。
ちなみに小麦粉の質によって、厚さ方向の膨張率は異なるので、
確認しながら作業をおこなう必要があります。