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夏のつゆ設計で差がつく|冷たい状態での美味しい出汁は、温かい出汁とは違う

夏のつゆ設計で差がつく|冷たい状態での美味しい出汁と温かい出汁とは違う

こんにちは、讃匠です。

7月も中旬を迎え、冷たいうどんの注文が一年で最も多くなる時期になりました。

前回は、「冷たいうどんの食感を最大限に活かす方法」として、水締めや茹で時間の重要性についてお話ししました。

今回は、その美味しさを完成させる最後の決め手である「つゆ」についてお話しします。

私は50年以上うどんづくりに携わってきましたが、繁盛店とそうでない店との差が最も現れるのが、このつゆ設計です。

どんなに良い麺でも、つゆが合わなければ本当の美味しさは生まれません。

冷たいつゆは温かいつゆとは別物

意外に多いのが、温かいかけうどん用のつゆを、そのまま冷やして使うケースです。しかし、これはおすすめできません。

温かい状態で美味しいつゆと、冷たい状態で美味しいつゆは、まったく別の設計が必要です。その理由は、人間の味覚は温度によって大きく変わるからです。分かりやすい例がアイスクリームです。

アイスクリームを常温に戻して食べると、「こんなに甘かったのか」と驚くほど甘く感じます。逆に言えば、冷たい状態では甘味や旨味、香りは感じにくくなります。

うどんのつゆも同じです。冷たいつゆは、冷たい状態で最も美味しく感じるように設計しなければなりません。

冷たいかけうどんが人気になってきた

最近では、冷たいかけうどんを提供する店も増えてきました。私は、とても良い流れだと思っています。ただし、冷たいかけうどんほど、出汁の良し悪しがそのまま評価される商品はありません。

ぶっかけのように濃い味ではありませんから、ごまかしがききません。だからこそ、冷たいかけ出汁は、温かいかけ出汁とは別に設計する必要があります。

ぶっかけ・ざる・かけは、それぞれ別の商品

私は昔から、ぶっかけ、ざる、かけうどんは、それぞれ別の商品として考えてきました。食べ方が違えば、求められる味も違います。

かけうどんは、出汁を飲みながら味わいます。ぶっかけうどんは、麺に直接出汁を絡めて食べます。ざるうどんは、少量のつゆにつけて食べます。この違いを理解している店ほど、お客様の満足度は高くなります。

調味料濃度は3倍以上違う

ここは非常に重要なポイントです。ぶっかけうどんやざるうどんの出汁は、かけ出汁とは調味料濃度がまったく違います。

基本的には、ぶっかけ・ざるうどんには、かけ出汁の3倍以上の調味料濃度が必要です。麺に直接絡めて食べるため、それだけしっかりした味が必要になるのです。

反対に、この濃い出汁をかけうどんに使えば濃すぎます。つまり、それぞれの商品には、それぞれに合った出汁設計が必要なのです。

出汁も商品設計である

効率を優先して、一種類の出汁ですべての商品を提供している店もあります。

しかし、それでは商品の個性は生まれません。私は、麺だけが商品ではなく、出汁も商品そのものだと考えています。

出汁は単なる味付けではありません。その一杯の価値を決める重要な設計なのです。

とっておきの提案

高たんぱくメニューで高付加価値商品をつくる

前回以降のブログでは、「夏のうどんは、たんぱく質をプラスすることで完成する」とご提案しました。 冷しゃぶ、蒸し鶏、焼き鯖、温玉、納豆などを組み合わせれば、栄養バランスが良くなるだけでなく、 お客様は価格にも納得してくださいます。 つまり、高たんぱくメニューは、健康価値と客単価アップを同時に実現できるのです。 そのためには、具材に合った出汁を設計することが重要です。

ビーガンという新しい市場

もう一つ注目したいのが、ビーガン市場です。欧米を中心に、植物性食品を選ぶ人が増えています。また、訪日外国人の増加により、日本でもビーガン対応を求められる機会が増えてきました。

昆布や椎茸、野菜を活かした出汁は、うどんの大きな強みになります。高たんぱくメニューだけでなく、ビーガン対応メニューも、新しい市場を広げる可能性があります。

地球温暖化は大きなチャンスでもある

近年、地球温暖化の影響で、暑い期間が年々長くなっています。以前は夏だけだった冷たいうどんの需要が、今では5月頃から始まり、秋口まで続くようになりました。

つまり、冷たいうどんは季節商品ではなく、長期間売上を支える主力商品になりつつあります。

だからこそ、

  • 冷たい麺の品質
  • 水締め
  • つゆ設計
  • 高たんぱくメニュー
  • ビーガン対応

などをしっかり準備している店ほど、これからますます売上を伸ばす可能性が高くなるでしょう。私は、これはうどん業界にとって大きなチャンスだと考えています。

今週の実践ポイント

ぜひ今週、次のことを確認してみてください。

□ 冷たいつゆを単独で味見する

□ 冷かけ・ぶっかけ・ざるの出汁を比較する

□ 出汁の濃度を見直す

□ 高たんぱく商品の追加を検討する

□ ビーガン対応商品の可能性を考える

まとめ

私は50年以上、うどんづくりを続けてきました。その中で感じるのは、お客様は麺だけでなく、出汁まで含めて「この店は美味しい」と評価しているということです。そして今、時代は大きく変わっています。

健康志向、インバウンド、ビーガン、そして地球温暖化。こうした変化を前向きに取り入れた店ほど、これからの時代に選ばれていくでしょう。ぜひ今年の夏は、もう一度「つゆ」を見直し、お客様の記憶に残る一杯をつくっていただきたいと思います。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

1948年5月、香川県坂出市生まれ。
国立高松工業高等専門学校 機械工学科を卒業後、川崎重工株式会社にて航空機の機体設計に従事。

その後独立し、1975年に大和製作所を創業。製麺機の開発・販売を通じて、麺業界の発展に貢献し、小型製麺機においては業界トップシェアを確立。

1984年には麺の研究を開始し、麺研究室(ジャパンフードリサーチ)を創業。讃岐うどんの伝統製法を科学的に解析し、現代の小麦粉に適した独自製法を確立。

1986年に株式会社讃匠を設立し、本格的にうどんの製造・販売を開始。「亀城庵」ブランドは楽天市場にてグルメ大賞を史上初の10回連続受賞するなど、高い評価を獲得。

また、2000年にうどん学校、2004年にラーメン学校・そば学校を開校し、これまでに多数の繁盛店を輩出。「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として、テレビ・メディア出演や全国講演も多数。麺ビジネス一筋に50年以上携わる

令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。