連載全2回のうち第1回目
作成:讃匠 麺研究センター
超高齢化社会という大きな変化の波が押し寄せる今、多くの方が店の未来について真剣に考えていらっしゃることでしょう。
前回までは、「感謝」の心と「最新テクノロジー」の活用が、これからの時代を生き抜く両輪であることをお伝えしてきました。
今回は、外食産業界の繁栄する商いの秘訣について掘り下げていきたいと思います。
情熱、意志力、信頼、経験、直感力…これらは、成功する経営者に共通する、いわば内面的な資産です。
しかし、これらは生まれつきの才能だけで決まるものではありません。
日々の意識と実践、とりわけ**「感謝」**によって磨かれていくのです 。
好調な時に感謝するのは簡単です。しかし、売上が伸び悩む、スタッフが辞めてしまうといった逆境の時にこそ、その出来事に感謝し、学びを見出す「感謝脳」が真価を発揮します 。この姿勢が、どんな困難にも屈しない強靭な忍耐力と意志力を鍛え上げるのです。
毎日当たり前に来てくれるお客様、働いてくれるスタッフ、そこにある食材。この「当たり前」に感謝することで、日々の些細な変化に気づく感性が養われます 。この気づきの積み重ねが、データだけでは見えない本質を捉える「経験知」となり、いざという時の「直感力」へと昇華されるのです。
感謝は、自分ひとりで完結するものではありません 。スタッフの日々の頑張りに「ありがとう」、お客様の来店に「ありがとうございます」と具体的に伝える。この一貫性のある行動が、揺るぎない「信頼」という資産を築き上げ、お店の無形の財産となるのです 。
まず、モノ、即ち、原材料、副資材の供給者、製麺機、厨房機器、次に人、働く人たち、お客さま、その他、関係する人たち、次がお金、金融機関、最期は情報です。われわれのビジネスは全て自分自身で完結することは絶対にありません。見えている部分、見えてない部分も含め、実に多くの要素、人、もので成り立っています。どちらに向いても感謝しきれるものではないのです。これらの関係性を知ることも永い繁栄には欠かせないのです。
特に、人生経験豊かな高齢のお客様は、単に商品の味だけでなく、 経営者の**「人となり」や仕事に対する「情熱」**を敏感に感じ取ります。
「地域で一番、心も体も温まるうどんを提供する」「日本の麺文化を次の世代に繋ぐ」といった経営者の大きな夢や情熱は、一杯の麺を通じてお客様に伝わります。その想いが、他店にはない独自の価値を生み出すのです。
マーケティング5.0の時代、AIを使えば顧客の購買データから行動パターンを予測できます 。しかし、そのデータを見て「なぜこのお客様は、いつもこのメニューを選ぶのか?」という背景にある想いや価値観を読み解くのは、経営者の経験と直感力です 。テクノロジーが示す氷山の一角(行動)だけでなく、水面下にある巨大な氷塊(態度・価値観)を理解できるかどうかが、お客様の心を掴む鍵となります 。
茨城県の「ばんどう太郎」様のように、高齢者のお客さまを大切にして、家族である若い世代を一緒にファンになっていただき、家族の絆を深める場を提供されているレストランがあります。このようにお店の長いファンだったにも関わらず、様々なご事情で来られなくなってしまったお客さま、古くからサポートしてくださっていたお客さまを大切にすることで、お店の信頼が深まり、それが結果的に新たな顧客の来店に繋がることも期待できます。
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